Vol.35 小さなレースミュージアム
ボビンレースに興味を持った30代半ば、スウェーデンレース協会が主催するレース講習会に参加したのです。オステルヨートランド県の中世修道院がある町ヴァードステナで、毎夏2週間このレース講習会が行われますが、この町には小さなレースミュージアムがあります。
テープ素材を使いボビンレースのテクニックで織った吹き流しが下がるミュージアムの入り口をくぐると、素敵な中庭に入っていきます。
このミュージアムは夏の間だけしか開館していませんが、23年前にレース講習会で一緒だった友達が、夏の間ここでスタッフとして働いています。彼女の首を飾るネックレスはメタルレースで、彼女のお手製。
ボビンレースとは糸巻きのボビンに糸を巻きつけ、レースの台に固定した型紙にそってピンを打ちながら、ボビンを右に左に交差させてパターンを織っていくものです。糸を交差させながらパターンを織り上げていく手順がとてもシステマティックで、レースを編んでいるときは糸の動きに集中して、他のことは頭の中から消えてしまいます。
このレース講習会に全部で4回通いましたが、今もヴァードステナに行くと、スウェーデンのことがよくわからず、ただただ東京からヴァードステナを目指して通ったあの日を懐かしく想い出すのです。
佐藤園子
スウェーデン在住テキスタイルジャーナリスト、翻訳家、コーディネーター。
スウェーデン語を学ぶために、40歳でスウェーデンに留学。スロースタートといえども、確実にデザイナー達とのネットワークを広げ、現在は心動かされるテキスタイルデザイナーのライフスタイルやハンドワークをテーマに執筆活動をしている。
著書・翻訳本
『スウェーデンから届いたニット』、『スウェーデンから届いたニット2』、『スウェーデンから届いたハンドワーク』、『光のアトリエ 北欧切り絵』以上NHK出版。『スウェーデンのあたたかい暮らし』ピエブックスほか。